「会社のYouTubeを始めることになったけれど、台本を書く時間がない」「社員に出てもらったら、原稿を読むだけの硬い動画になった」。社内で撮影を進めるご担当者さまから、よく聞く悩みです。
台本の作り方を調べると、目的を決めて、構成を組んで、セリフを書いて、声に出して確かめる……と、手順がたくさん出てきます。どれも正しいのですが、毎週の動画のたびにここまで書くのは大変です。この記事では、台本を書き込む代わりに、話す順を3行だけ書いて撮る方法と、何本かをまとめて撮る日の進め方をご紹介します。
企業YouTubeの台本は「箇条書き3行」で足りる
企業YouTubeの撮影や内製で、台本をどこまで書くか迷ったら、まず「話す順を3行」から始めてください。セリフを一字ずつ書いた原稿は、なくても撮れます。
台本の書き方を説明している記事の多くも、「読み上げる原稿にしない」「出る社員にセリフを覚えさせない」と書いています。原稿を読むと、どうしても目線が下がり、声が平らになるからです。大事なのは、何を、どの順で話すかが決まっていること。それなら、箇条書きで十分に伝わります。
もう一つの理由は、時間です。勤め先で動画を使っている148人(マーケティング・広報などの関係者を含む)に聞いた2025年の調査では、「動画コンテンツの制作過程の課題」(複数選択)として、「制作に時間がかかる」を選んだ人が56.1%でした。
社内だけで作っている会社では、時間の問題がよりはっきり出ます。同じ年の別の調査で、動画を「完全内製」と答えた38人に内製の課題(複数選択)を聞いたところ、いちばん多かったのは「撮影・編集ツールの導入や運用が難しい」(44.7%)で、「社員のリソースが不足しており、制作に時間を割けない」も31.6%でした。回答した人数は多くありませんが、担当者の時間が限られていることがうかがえます。
書く時間を減らせる所から減らす。その一つが、台本を3行のメモにすることです。
出典: 比較ビズ・Funusual 共同調査「動画マーケティングの活用実態と費用対効果に関する調査」(2025年3月発表・回答148人) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000100813.html
比較ビズ・Mteam 共同調査「動画制作の内製・外注率と課題に関する実態調査」(2025年5月発表・回答111人のうち完全内製38人) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000100813.html
台本を書き込むほど、撮影が続かなくなる3つの理由
台本をしっかり書くこと自体は、悪いことではありません。ただ、毎週・毎月続ける会社のYouTubeでは、書き込むほど次のような負担が増えていきます。
1. 書くのに時間がかかる
10分の動画でも、話し言葉をすべて文章にすると、書いて、読み直して、社内で確かめるまでに、撮影より長くかかることもあります。ほかの仕事と掛け持ちのご担当者さまにとって、1本ごとに長い原稿を書くのは重い作業です。原稿が書けない週は、撮影も止まってしまいます。
2. 覚える負担が増え、話し方が硬くなる
出る社員は、原稿を覚えるか、読むかのどちらかになります。覚えるのは大変ですし、読むと棒読みになりがちです。言い間違えるたびに最初から撮り直すことになり、撮影の時間も延びます。
3. 直すたびに、社内の確認が増える
文章が長いほど、上司や関係する部署が細かい言い回しまで直したくなります。確認が何往復も続くと、撮る前に疲れてしまいます。3行のメモなら、確かめるのは「話す順」と「言い間違えられない言葉」だけです。
台本のほかに、会社のYouTubeが止まる理由と、再開して最初に撮る4本の決め方は、YouTubeが続かない会社へでまとめています。
話す順の3行メモの書き方
メモは1本につき、題名(仮)を1行と、話す順を3行だけ書きます。慣れれば5分ほどで書ける量です。
- はじめに言うこと: この動画で分かること、または結論を1文で。「今日は〇〇を△△する方法をお話しします」のように、見た人が「自分に関係ある」と分かる言い方にします
- わけ・例: なぜそう言えるのか、または実際の例を1つ。たくさん並べず、いちばん伝えたい1つに絞ります。お客さまの例を使うときは、名前を出さない・出してよいかを確かめておきます
- 最後に言うこと: 見た人にしてほしいことを1つ。「資料を見てください」「次の動画もどうぞ」「気になる方はお問い合わせください」など、1つだけにします
3行のほかに、メモの下に「言い間違えられない言葉」の欄を作っておきます。料金・数字・製品の正式な名前・決まりごとの言い回しなど、間違えると困る言葉だけは、ここに正確に書いておきます。話す途中で迷ったら、ここを見ればよい、という場所です。
なお、「だれに見せて、何をしてほしいか」という動画の役目は、メモを書く前に一度決めておくと、3行目が迷いにくくなります。役目の決め方は動画編集を依頼する前に決める5つのことの1章でまとめています。
チャンネル全体の目的と、再生数より先に見る数字は、企業のYouTubeの目的でまとめています。
お客さまの質問から「何を発信するか」を決める表は、税理士の顧問先の増やし方でご紹介しています。この記事の3行メモは、決めた1本を撮るときの「話す順」のメモです。
3行メモの見本と、コピーできるひな形
架空の会社(オフィス家具を扱う会社)で書いた見本です。話す人が見るのは、『言うこと』の3行だけです。『編集への一言』と、下の『言い間違えられない言葉』は、なくても撮れます。書いておくと、撮ったあとにそのまま編集する人へ渡せます。
- 言うこと
- 目安は、座る時間で変わります。今日は決め方をお話しします
- 編集への一言
- 題名を大きく文字で出す
- 言うこと
- 毎日長く座る席は早く傷む。会議室の椅子はもっと長くもつ。席ごとに分けて考える
- 編集への一言
- 執務席・会議室・受付を図で並べる
- 言うこと
- 席ごとの見直し表を概要欄に置いたので、見てみてください
- 編集への一言
- 最後に「概要欄へ」の文字を出す
- 製品名
- 「〇〇チェア Pro」(「〇〇チェア」だけで略さない)
- 保証の期間
- 3年(「ずっと」「長く」とは言わない)
見本のとおり、文はきれいに整えなくてかまいません。話す人が見て思い出せれば十分です。下のひな形をコピーして、社内の共有メモや表計算のシートに貼って使ってください。
そのまま使える3行メモのひな形
■ 題名(仮): 【見た人が知りたいことを1行で】 ■ 話す人: 【お名前】 撮る日: 【〇月〇日】 1. はじめに言うこと: 【この動画で分かること・結論を1文】 (編集への一言: 【例: 題名を文字で出す】) 2. わけ・例: 【理由か、実際の例を1つ】 (編集への一言: 【例: 図や写真を入れる】) 3. 最後に言うこと: 【見た人にしてほしいことを1つ】 (編集への一言: 【例: 最後に案内の文字を出す】) ■ 言い間違えられない言葉(ここだけは正確に) ・【料金・数字・製品の正式な名前・決まりごとの言い回し】 ■ 映してはいけないもの ・【例: 取引先の社名、ホワイトボードの予定】
話すのが苦手な社員に頼むときのコツ
社内で「出る人」をお願いするとき、いちばんの壁は「うまく話せる自信がない」という気持ちです。頼み方を少し変えるだけで、引き受けてもらいやすくなります。
- メモは前日までに渡す
- 覚えなくていい・読み上げなくていいと伝える
- 1行ずつ区切って撮ってよい
- 聞き手が3行を質問にして聞く
前日までにメモを渡し、「覚えなくていい」と伝える
当日にいきなり渡されると、だれでも緊張します。前日までにメモを渡し、「3行を見ながら話せば大丈夫です。覚えたり、読み上げたりしなくていいです」とひと言添えてください。それだけで、気持ちはかなり楽になります。
1行ずつ区切って撮ってよい
3行を続けて話す必要はありません。「はじめ」を撮ったら止めて、次に「なか」を撮る。言い間違えたら、その行だけ撮り直せばよいのです。つなぐのは編集の仕事なので、話す人は1行ずつに集中できます。
聞き手を立てて、質問に答える形にする
カメラに向かって一人で話すのが苦手な人には、ご担当者さまが聞き手になって、3行を質問にして聞く方法が向いています。「買い替えの目安はありますか?」「席によって違うんですか?」と聞かれれば、話す人はふだんお客さまに答えるのと同じように話せます。聞き手の声は、編集で消したり、文字に置き換えたりできます。
顔を出したくない社員がいる場合は、手元や画面だけを映す、声だけで出る、といった形もあります。3つの形とその選び方は、会社のYouTubeに社員が出たくないときでご紹介しています。
まとめ撮りの1日の予定表(企業YouTubeの撮影を1日で)
3行メモがあると、何本かを1日でまとめて撮る「まとめ撮り」がしやすくなります。メモを本数分そろえておけば、撮影の日は準備と片付けを1回で済ませられるからです。毎週カメラを出して片付けるより、準備と片付けの回数が減るぶん、社内の時間を少なくして続けられます。
下は、1人が話す動画を4本撮る日の例です。時刻と本数は架空のもので、話す長さ・人数・場所によって変わります。
- 9:30 準備機材を置き、場所を整え、3行メモを話す人と一緒に読む決めること: 映り込み(社外の人・資料・ホワイトボード)はないか/音を拾う場所か
- 10:00 1本目(試し撮りを兼ねる)撮ったらすぐに見返し、映りと音を確かめる決めること: 明るさ・音の大きさ・立ち位置。ここで決めた設定で残りを撮る
- 10:45 2本目1行ずつ区切って撮る決めること: 言い間違えたら、その行だけ撮り直すか
- 11:30 昼休み話す人にしっかり休んでもらう決めること: 午前に撮った分を見返して、午後に直したい所(声の大きさ・話す速さ)はあるか
- 13:00 3本目・4本目午前と同じ設定で撮る決めること: 疲れが見えたら、4本目を別の日に回すか
- 14:30 撮れたかの確認と、撮り直し全部のファイルを見て、抜けている行がないか確かめる決めること: 撮り直しが必要な行だけ、ここで撮る
- 15:00 片付け・素材を渡すファイル名に動画の番号をつけ、3行メモと一緒に共有フォルダへ決めること: だれが、いつまでに編集する人へ渡すか
ポイントは、1本目を試し撮りにして、そこで設定を決めることと、最後に「撮れたかの確認」の時間を取っておくことです。撮り終えたあとで音が入っていなかったと分かると、もう一度その日を作らなければなりません。
撮影する場所や、画面・背景に映ってはいけないものの決め方は、動画編集を依頼する前に決める5つのことの4章にまとめています。
台本が必要な場面と、メモを編集に渡すとき
文章で書いておいたほうがよい場面
「一言一句の台本はいらない」といっても、すべての場面ではありません。次のような所は、言い間違えると困るので、その部分だけは文章で書いておきます。
- 料金・数字・期間など、正確さが求められる所
- 法律や制度、契約の条件にかかわる言い回し
- 製品の正式な名前や、社内で決まっている表現
また、採用の動画や会社紹介の動画のように、何度も使う前提で作り込む動画は、別の考え方になります。この記事の3行メモは、毎週・毎月続ける発信の動画のためのものです。法律や制度の内容を話すときは、専門家や担当の部署に確かめてから撮ってください。
3行メモは、そのまま編集の指示になる
話す順が3行で決まっていれば、編集する人は「どこで区切り、どこに文字や図を入れるか」がすぐに分かります。社内で編集する場合も、外に頼む場合も、撮った素材と一緒に3行メモを渡すだけで、指示書の代わりになります。
外に頼むときは、台本づくりが料金に含まれるかどうかも確かめておきましょう。依頼先によって「話す内容の骨子まで」なのか「一言一句の台本まで」なのかが違います。見積もりで確かめる所はYouTube運用代行の相場の表に、1本ごとの編集の値段が変わる条件は動画編集の依頼相場にまとめています。たとえば映作堂の撮るだけおまかせプランでは、話す内容の骨子(冒頭のひとこと・見出し・締めのご案内)を問いの形でお渡しし、撮影はお客さまに月1〜2回のまとめ撮りでお願いしています。
社内で編集するとかかる時間はYouTubeの編集に時間がかかる理由と、1本あたりの社内の費用の出し方で、社内に残す作業と任せる作業の分け方はYouTube運用代行で頼めること・社内に残すことで、外に頼むときの素材の渡し方はYouTubeの編集を外注する手順の2週目で、それぞれまとめています。
まとめ: 撮る前の確認
企業YouTubeに、一言一句の台本はいりません。話す順を3行に書き、言い間違えられない言葉だけを正確にしておけば、話すのが苦手な社員でも撮れます。メモを本数分そろえて、まとめ撮りの日を1日作れば、社内の時間も少なくて済みます。撮る前に、次の5つを確かめてください。
- 3行メモ(はじめ・わけや例・最後)を、本数分そろえた
- メモを前日までに話す人へ渡し、「覚えなくていい」と伝えた
- 言い間違えられない言葉(料金・数字・製品名)を確かめた
- 撮る場所に、映ってはいけないもの(社外の人・資料・予定)がない
- 最後に「撮れたかの確認」の時間を予定に入れた
よくある質問
YouTubeに台本は必要ですか?
「何を、どの順で話すか」を決めたメモは必要です。ただ、セリフを一字ずつ書いた台本までは、なくても撮れます。会社のYouTubeを続けるなら、話す順を3行にしたメモから始めるのがおすすめです。料金や数字など、言い間違えられない所だけは文章で書いておきます。
すべての発言を文章にする必要はありますか?
ありません。すべてを文章にすると、書く時間がかかるうえに、読み上げる話し方になりがちです。文章にするのは、料金・数字・製品の正式な名前・法律や制度にかかわる言い回しなど、正確さが必要な所だけで十分です。
台本なしで話すと、話がまとまらなくなりませんか?
何も決めずに話すと、まとまらないことがあります。だからこそ、3行メモで「はじめ・わけや例・最後」の順だけを決めておきます。それでも話が広がるときは、1行ずつ区切って撮り、長くなった所を編集で短くすれば、まとまった動画になります。
まとめ撮りは、1日に何本くらい撮れますか?
話す長さ・出る人数・場所によって変わるため、決まった本数はありません。この記事の予定表は、1人が話す動画を4本撮る日の例です。最初は少なめの本数で予定を組み、1本目で設定を決めること、最後に撮れたかを確かめる時間を取っておくことをおすすめします。
映作堂について
映作堂は、会社のウェビナー録画とYouTube動画の編集をお引き受けしています。撮影はいつもどおりお客さまにお願いし、撮った動画を送っていただくだけで、伝わる動画に仕上げます。一言一句の台本は作りませんが、撮るだけおまかせプランでは、企画案と話す内容の骨子(冒頭のひとこと・見出し・締めのご案内)までをご用意します。まずは1本、お試しください。