「顧問先は紹介で少しずつ増えてきた。でも、紹介だけでは波がある」「ホームページやブログで発信したほうがいいのは分かるけれど、何を書けばいいか分からない」。開業して数年の事務所や、少人数で回している事務所から、よく聞く悩みです。

発信のネタは、新しく考えなくても大丈夫です。毎日の電話・メール・面談で聞かれている質問が、そのまま発信の材料になります。下の図が、この記事でご紹介する流れです。

よくある質問を、顧問先につながる発信にする流れ

  1. 質問を書き留めるお客さまの言い方のまま
  2. 答えを3行にまとめる結論・勘違い・相談の目安
  3. 出す先を1つ選ぶブログ・よくある質問など
  4. 出す1問を1本に
  5. 聞かれたら直す答え方を少しずつ育てる

紹介された方が、会う前に事務所の答え方を読める

図1 よくある質問を発信にする5つのステップ。質問を書き留めて、答え3行にまとめ、出す先を1つ選んで出します

税理士の顧問先の増やし方は「紹介」+「会う前に伝わる発信」

税理士の顧問先を増やす方法として、まず挙がるのは紹介です。今の顧問先、他の士業、金融機関、知人からの紹介は、はじめから信頼のある状態でお会いできるため、今も強い入口です。紹介を頼む工夫は、この記事でも否定しません。

ただ、紹介された方も、いきなり電話をかけてくるとは限りません。事務所の名前を検索して、ホームページやブログを見てから連絡するかを決める方もいます。そのとき見つかるものが「事務所の住所と料金表だけ」なのか、「自分と同じ悩みへの答え」なのかで、相談のしやすさの伝わり方が変わります。

経営者は「相性・人柄」も見ている

税理士を選ぶときに何を見ているかについて、2026年に発表された調査があります。税理士の紹介サービスを運営する事業者が、自社の利用者に行った調査で、回答した人も限られているため、目安として見てください。

  • 税理士の紹介サービスを使った105人への調査では、税理士選びで「相性・人柄」を重視したと答えた人が92.4%でした(複数回答)。

選ばれる理由は1つではありませんが、「この人に相談しやすそうか」は、選ぶ側が気にしている点の1つと言えそうです。そして、相談しやすさは、会ってからだけでなく、会う前に読める「答え方」でも伝えられます。これが、この記事で紹介する発信の考え方です。

出典: 株式会社ビスカスが自社の税理士紹介サービスの利用者に行ったアンケート(2026年4月14日発表。2025年8月〜2026年1月、有効回答105件、WEBアンケート)。ページへのリンクは、記事の最後の「この記事で参考にしたページ」にあります。

ホームページ・ブログ・SNS・交流会など、集客の入口をどの順番で始めるかは、税理士の集客、紹介が止まったら次はこの順番でにまとめています。この記事では、どの入口を使うときにも必要になる「何を書くか」に絞ってご紹介します。

発信のネタは、お客さまの「よくある質問」

「発信しましょう」と言われても、手が止まるのは何を書けばいいかが決まらないからです。けれど、事務所にはすでにネタがたまっています。お客さまから毎日のように聞かれている質問です。

今のお客さまに聞かれたことは、まだ出会っていない経営者も気にしていることが多いものです。集める場所は、次の4つです。

よくある質問
  • 電話・メール今週聞かれたことを1行メモ
  • 初回相談の説明毎回同じ説明をしている所
  • 面談のメモ顧問先との打ち合わせで出た話
  • 時期もの確定申告・年末調整の前に増える質問
図2 よくある質問を集める4つの場所。電話・メール、初回相談の説明、面談のメモ、時期ものの質問から拾います

集めるときのコツ

  • 質問だけを、お客さまの言葉のまま1行で残す: 例「パソコンを買ったら、全部経費になる?」。答えは次の章の型で、あとからまとめます
  • 同じ質問に「正」の字をつける: 何度も聞かれる質問ほど、発信したときに読まれやすい質問です。印の多いものから書きます
  • 出す前に、だれの話か分からない形にする: 質問はそのまま使っても、業種・地域・金額・時期など、お客さまが分かる手がかりは消すか一般的な言い方に変えます。迷う質問は出さずに、事務所の中の答え方のメモとして使います

経営者が聞きたいのは、申告の手続きだけではありません。お金の流れや資金繰りの質問も、ネタの候補に入れておくとよいでしょう。

確定申告や年末調整など、時期によって増える質問を、どの月に出すかの並べ方は、税理士のブログ集客:年末調整から確定申告まで、この冬の月別テーマ表でご紹介しています。

税理士の差別化は「答え方」に出る

税理士の差別化というと、「得意な業種を決める」「強みをはっきりさせる」と言われます。大切なことですが、いざ文章にしようとすると「親身な対応」「丁寧なサポート」のような、どの事務所にも当てはまる言葉になりがちです。

そこでおすすめしたいのが、よくある質問への「答え方」で違いを見せることです。同じ質問でも、答え方は事務所ごとに変わります。

  • 言葉: 専門用語をどこまで使うか。かみくだいて答えるか
  • 例: 飲食店の例で答えるか、建設業の例で答えるか。得意な業種の例は、その業種の経営者に届きやすくなります
  • 線の引き方: どこまでを一般的な答えにし、どこからを「ご相談ください」にするか

「強み」を言葉で言い張るより、答えを1つ読んでもらうほうが、その事務所らしさが伝わります。読んだ方が「この人の説明は分かりやすい」と感じれば、それが選ぶ理由の1つになります。答えがたまっていくと、自然に「この業種の質問に強い事務所」という見え方にもなっていきます。

1問を「答え3行」にまとめる型

集めた質問は、1問ずつ3行の答えにまとめます。長い解説を書こうとすると続きません。まずは3行で十分です。

  1. 1行目 結論: 聞かれたことに、最初に答えます。「場合によります」だけで終わらせず、何で変わるかを書きます
  2. 2行目 よくある勘違い・条件: 読んだ方がつまずきやすい所や、答えが変わる条件を1つだけ書きます
  3. 3行目 ご相談の目安: 「こういう場合は、個別にご相談ください」と、事務所に相談するとよい場面を書きます

3行目があることで、一般的な答えと、事務所に相談してほしい個別の判断との間に線が引けます。税の判断は一人ひとりの事情で変わるので、記事では考え方まで、個別の判断は相談へとつなぐ形にしておくと安心です。

答え3行の見本(例・架空の事務所)税額や個別の判断は書かず、考え方と相談の目安までにしています。実際の答えでは、1行目に年数や目安まで書きます(この見本では省いています)
質問1
聞かれた質問
領収書って、いつまで取っておけばいい?
1行目 結論
書類の種類と、事業の形(個人か法人か)によって、保存する年数が変わります
2行目 勘違い
「申告が終わったら捨ててよい」と思われがちですが、申告の後も保存が必要です
3行目 相談の目安
片づけで処分する前に、どの書類を残すかご相談ください
質問2
聞かれた質問
会社にしたほうが、税金は安くなる?
1行目 結論
利益が増えてくると、会社にしたほうが有利になることがあります。どこが境目かは、利益の額やご家族の状況で変わります
2行目 勘違い
税金だけでなく、社会保険や事務の手間も合わせて比べる必要があります
3行目 相談の目安
利益が増えてきて検討を始めるときは、前年の決算書を持ってご相談ください
図3 「答え3行」の見本(架空の事務所の例)。1行目に結論、2行目によくある勘違い、3行目に相談の目安を書きます

見本はあくまで型の例です。実際の答えは、事務所の言葉と、得意な業種の例で書いてください。3行で書いてみて「もっと説明したい」と思った質問は、あとでブログ記事として長く書く候補になります。

出す先は、質問に合わせて1つ選ぶ

答え3行ができたら、出す先を選びます。全部に出す必要はありません。その質問に合う出す先を、まず1つ選べば十分です。迷ったら、下の表の「こんな質問に」の列で選んでください。

出す先こんな質問に手間
ホームページのよくある質問3行のままで足りる質問小さい(3行をそのまま足す)
ブログ記事何度も聞かれ、3行では説明が足りない質問中くらい(3行をふくらませて書く)
紹介用の1枚・返信のひな形紹介のときや問い合わせへの返信で、毎回説明している質問小さい(3行を渡せる形に整える)
1〜3分の短い動画文章より、話したほうが早く伝わる質問中くらい(3行をそのまま話す。顔を出さない形もある)

紹介用の1枚は、顧問先に紹介をお願いするときに「こういうことで困っている方がいたら、これを渡してください」と言える形です。紹介する側も説明が楽になります。

短い動画は、文章を読むのが苦手な経営者に届きやすいこともあります。答え3行をそのまま話すだけなので、新しく台本を考える必要はありません。顔を出さずに作る形は、会社のYouTubeに社員が出たくないとき:顔出しなしの3つの形で紹介しています。

ただし、話すのや撮るのが負担なら、後回しで構いません。文章の3つで十分に始められます。動画の編集だけを外に頼む場合は、頼む前に決めておくことを動画編集を依頼する前に決める5つのことに、費用の決まり方を動画編集の依頼相場:1本の値段が変わる6つの条件と、見積もりの頼み方にまとめています。

よくある質問の記入表(社労士事務所でも使えます)

ここまでの流れを、1行=1問の表にまとめます。列は「聞かれた質問」「答え3行」「出す先」「いつ出すか」の4つです。下は、架空の事務所で書いた記入例です。

聞かれた質問答え3行(要点)出す先いつ出すか
領収書って、いつまで取っておけばいい?書類と事業の形で年数が変わる/申告の後も保存が必要/処分する前にご相談をホームページのよくある質問例: 今週
会社にしたほうが、税金は安くなる?利益が増えると有利なことも。境目は利益や家族の状況で変わる/社会保険や事務の手間も比べる/前年の決算書を持ってご相談をブログ記事・紹介用の1枚例: 来月の第1週
(社労士事務所の例)パートさんにも有給休暇はある?条件を満たせばあります/日数は働く日数などで変わる/勤務日数が人によって違うときは、ご相談をホームページのよくある質問・短い動画例: 再来週

社労士事務所でも、顧問先を増やすための考え方は同じです。労務の相談で毎回聞かれる質問を、同じ表に書き出してみてください。下の空の表は、コピーして事務所の共有メモや表計算に貼り付けて使えます。

そのまま使える「よくある質問」記入表

よくある質問の記入表(1行=1問)

■ 質問1
 聞かれた質問(お客さまの言い方のまま): 【 】
 どこで聞かれたか: 電話・メール/初回相談/面談/時期もの
 聞かれた回数: 【正の字】
 答え3行
  1行目 結論: 【 】
  2行目 よくある勘違い・条件: 【 】
  3行目 ご相談の目安: 【こういう場合はご相談ください】
 出す先(まず1つ): ブログ記事/ホームページのよくある質問/紹介用の1枚・返信のひな形/短い動画
 □ お客さまが分かる手がかり(業種・地域・金額・時期など)を消した
 いつ出すか: 【〇月〇日】
 出した後に聞かれたこと(答えを直すメモ): 【 】

■ 質問2
 聞かれた質問: 【 】
 答え3行: 【 】/【 】/【 】
 出す先: 【 】
 いつ出すか: 【〇月〇日】

1人・少人数の事務所で、顧問先を増やす発信を続ける目安

1人の税理士や少人数の事務所では、本業の合間に発信の時間をつくるのが一番の壁です。続けるための目安は、次の4つです。

  • 書き留めるのは週に1問、出すのは月2本からで十分: 今週聞かれた質問を1つ、答え3行で書いておくだけ。新しく考える時間はいりません
  • 出す先は1つから: 最初はホームページのよくある質問だけ、などと決めます。慣れてから、ブログ記事や紹介用の1枚に広げます
  • 繁忙期は書きためた分を出す: 確定申告や決算が重なる時期は、新しく書かず、手が空く時期に書きためておいた分を出します
  • 聞かれたら直す: 出した答えについて、また質問されたら、2行目や3行目を足して答えを育てます

1つの答えを何か所にも出す、毎週の回し方は、社労士のSNS:事務所の発信を週1本で続ける、1本を3つに分ける回し方でくわしくご紹介しています。

「1人で顧問先は何件まで」は、事務所ごとに違う

「1人の税理士だと、顧問先は何件くらいが目安?」という疑問もよく聞かれます。月次の記帳まで引き受けるのか、決算と相談が中心なのか、お客さまの規模や業種によって、1件にかかる時間は大きく変わります。そのため、この記事では件数で言い切ることはしません。

目安を考えるなら、今の顧問先1件に、月に何時間かかっているかを書き出してみるのがおすすめです。手が回る件数が見えると、「何件増やしたいか」「どんなお客さまに来てほしいか」が決まり、どの質問から書くかも選びやすくなります。

まとめ

税理士の顧問先の増やし方は、今も紹介が一番の入口です。そこに「会う前に相談しやすさが伝わる発信」を足すと、紹介された方にも、検索で探している方にも、事務所の答え方を知ってもらえます。ネタは、お客さまに毎日聞かれている質問。1問を答え3行にまとめ、出す先を1つ選んで出す。答え方そのものが、事務所の差別化になります。

まずは、次の5つから始めてみてください。

  1. 今週、電話・メール・面談で聞かれた質問を、言い方のまま3つ書き留めた
  2. いちばん多く聞かれた質問を1つ選んだ
  3. その質問に、結論・よくある勘違い・ご相談の目安の3行で答えた
  4. 出す先を1つ決めた(まずはホームページのよくある質問など)
  5. 顧問先に「この答えを紹介に使ってください」と渡せるか考えた

よくある質問

社労士事務所でも同じやり方でいいですか?

同じやり方で使えます。社労士事務所なら、有給休暇や社会保険の手続き、就業規則など、労務の相談で毎回聞かれる質問を同じ記入表に書き出します。答え3行の3行目には、「勤務の形が人によって違うとき」など、個別に相談してほしい場面を書いておくと、一般的な答えとの線が引けます。

1人の税理士だと、顧問先は何件くらいが目安ですか?

引き受ける業務の中身(月次の記帳まで行うか、決算と相談が中心か)や、お客さまの規模・業種によって大きく変わるため、一律の件数で言うのは難しいところです。今の顧問先1件に月に何時間かかっているかを書き出すと、無理なく引き受けられる件数の目安が見えてきます。

発信を続ければ、顧問契約につながる問い合わせは来ますか?

地域や得意な業種、出す先によって変わるため、必ず来るとは言えません。ただ、問い合わせをくださる方が、会う前に事務所の答え方を読んでいれば、初回の相談から話が進みやすくなります。紹介の後押しとしても使えるので、問い合わせの数だけでなく、紹介からの相談が進みやすくなったかも見てみてください。

税の質問に答えを書くと、無料で済まされて仕事が減りませんか?

答え3行の3行目「ご相談の目安」で、一般的な考え方と、個別の判断との間に線を引いておくのがおすすめです。記事で分かるのは考え方まで。自分の場合はどうなるかを知りたい方が、相談に来てくださいます。答えを読んで「この事務所なら分かりやすく説明してくれそう」と感じてもらうことが、発信の目的です。

開業したばかりで、紹介がまだ少ない事務所が何から始めるかは、税理士の集客、紹介が止まったら次はこの順番でのよくある質問でお答えしています。

この記事で参考にしたページ

1章の調査の数字は、次のページで確かめました(2026年10月29日に映作堂で確認)。税理士の紹介サービスを運営する事業者が、自分で行った調査です。

株式会社ビスカスが行った、税理士紹介サービスの利用者アンケート(2026年4月14日発表)

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