開業してしばらくは、顧問先や知り合いからの紹介で、少しずつお客さまが増えてきた。ところが、ここ数か月は新しいご相談がほとんどない。紹介してくれていた方が異動した、顧問先の会社が代替わりした──理由は思い当たっても、「では次に何をすればいいのか」は分かりにくいものです。

調べると、ホームページ、ブログ、SNS、広告、YouTube、セミナーと、集客方法はたくさん出てきます。でも、全部を同時に始める時間はありません。この記事では、方法を並べて比べるのではなく、紹介が止まった「今」から、どの順番で入口を足せばよいかを、1本の道にしてお伝えします。

紹介が止まったときに、入口を足す順番

  1. 1段目 紹介を頼み直す顧問先・金融機関・他の士業に一言
  2. 2段目 見つけてもらう場所ホームページと地図の情報
  3. 3段目 よくある質問の記事月2本から
  4. 4段目 答えを短い動画にも必要なときだけ

紹介と検索の、両方から相談が来る

図1 税理士事務所の集客の入口を足す順番。上の段から1つずつ足し、前の段が1か月続いたら次の段へ進みます

税理士の集客は「紹介を続けながら、入口を足す」で考える

税理士の集客方法を考えるとき、最初に押さえておきたいのは、紹介が税理士の集客のいちばん大きな入口だということです。少し前の2020年の調査ですが、全国の税理士・会計士526人に聞いた調査では、新規顧客の開拓方法で最も多かったのは「顧問先からの紹介」で、71.9%でした(複数回答)。「友人・知人・出身事務所等からの紹介」「金融機関からの紹介」「士業ネットワーク」も、それぞれ30%を超えています。

同じ調査では、「今後、重視していきたい開拓方法」として「金融機関からの紹介」が注目されていて、「士業ネットワーク」や「ウェブサイトからの問合せ」なども挙がっていました。紹介を軸にしながら、ほかの入口も考えている先生がいることがうかがえます。

出典: 「税理士事務所開業講座オンライン」データページ(TKC・2020年11月19〜20日調査、全国の税理士・会計士526人、インターネット調査、複数回答) https://tkc.jp/ao/kaigyoonline/data/expansion/

紹介には、はじめから信頼がある・話が早いという良さがあります。ただ、紹介は相手のタイミングしだいで、こちらから増やしにくいのも事実です。そこで、紹介をやめて別の方法に乗り換えるのではなく、紹介を続けながら、その手前と横に「見つけてもらう入口」を1つずつ足していきます。

足す順番は、図1のとおりです。1段目と2段目はほぼお金がかからず、すぐに始められます。3段目は時間がかかりますが、書いたものが事務所に残ります。4段目の動画は、3段目ができてから、必要なときだけ足せば十分です。

税理士の集客ができないと感じるとき:紹介が止まる3つの理由

「税理士の集客ができない」と感じるとき、多くの場合は事務所の力が足りないのではなく、紹介の流れが、外の事情で細くなっているだけです。よくある理由は次の3つです。

理由1 紹介してくれていた方の事情が変わった

金融機関の担当者の異動、顧問先の社長の引退や代替わり、紹介元の事務所の方針の変化など。紹介は「人」についているので、その人の事情が変わると、ぱたりと止まることがあります。

理由2 紹介してくれる人の数が、まだ少ない

開業したばかりの事務所は、紹介してくれる顧問先や知り合いの数そのものが少なく、紹介が「たまたま」に近くなります。これは時間とともに増えていくものなので、焦る必要はありません。その間をつなぐ入口が別にあると安心です。

理由3 「どんな相談に強い事務所か」が伝わっていない

顧問先は先生のことを信頼していても、「どんな会社を紹介すればいいか」までは分かっていないことがよくあります。「いい先生がいるよ」とは言えても、知り合いの悩みと先生の得意分野が結びつかなければ、紹介は生まれません。

1つ目は止められませんが、2つ目と3つ目は、こちらから手を打てます。次の章から、その手の打ち方を順番に見ていきます。

1段目:顧問先・金融機関に紹介を頼み直す

最初の一歩は、新しいことを始めるのではなく、今ある紹介の流れを太くすることです。今週からでき、お金もほぼかかりません。

  1. 紹介してほしいお客さまを一言で決める。例:「創業2〜3年目で、記帳を自分でしていて手が回らなくなってきた会社」「相続のご相談がある方」。「どなたでも」より、相手が思い浮かべやすくなります。
  2. 伝える相手を3つに分ける。顧問先、金融機関の担当者、行き来のある他の士業の先生。調査で多かった紹介元と同じです。
  3. 紹介した人が「渡せるもの」を用意する。事務所のホームページの「こんな方のご相談をお受けしています」のページのリンクがあれば、紹介する側は、それを送るだけで済みます(2段目で整えます)。
  4. 紹介をいただいたら、お礼と経過を伝える。まずお礼を伝えます。ご紹介いただいた方の了承を得られていれば、「ご相談に来られました」などの経過も一言伝えると、次の紹介がしやすくなります。
紹介のお願いメモ(例)伝える相手ごとに、1行ずつ書いておく
顧問先
紹介してほしい方
例: 創業2〜3年目で、記帳に手が回らなくなってきた会社
伝える場面
決算の打ち合わせの終わりに一言
渡すもの
「ご相談をお受けしている方」のページのリンク
金融機関
紹介してほしい方
例: 融資の相談の前に、決算書を整えたい会社
伝える場面
面談のときに。紹介しやすい会社も聞いてみる
渡すもの
同じページのリンク
他の士業
紹介してほしい方
例: 相続のご相談がある方
伝える場面
下の文面をもとにメールで
渡すもの
同じページのリンク
図2 紹介のお願いメモの見本。顧問先・金融機関・他の士業の先生ごとに「紹介してほしい方・伝える場面・渡すもの」を1行ずつ決めておく

改まった場を作らなくても、決算の打ち合わせや面談の終わりに一言添えるだけで十分です。メールで伝える場合は、次の文面をもとに書き換えてお使いください。

そのまま使える「紹介のお願い」の文面

件名: いつもありがとうございます(ご紹介のお願い)

【お相手のお名前】さま

いつもお世話になっております。【事務所名】の【お名前】です。

日ごろのお付き合いに感謝を込めて、ひとつお願いがございます。
もし周りに、次のようなことでお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所をご紹介いただけないでしょうか。

・【例: 創業2〜3年目で、記帳や経理に手が回らなくなってきた会社】
・【例: 銀行から融資の相談をする前に、決算書の見方を知りたい方】

ご紹介の際は、こちらのページのリンクをそのままお送りいただければ大丈夫です。
【事務所のホームページの「ご相談をお受けしている方」のページのURL】

初回のご相談は【例: 無料・オンラインでも可】です。
ご無理のない範囲で、お心に留めていただけましたら幸いです。

【事務所名】【お名前】
【電話番号・メールアドレス】

金融機関の担当者には、「どんな会社なら、こちらからも紹介しやすいか」を逆に聞いてみるのも一つの方法です。お互いに紹介し合える関係ができると、流れが一方通行になりにくくなります。

2段目:税理士事務所のホームページと地図の情報を整える

紹介された方も、まずは事務所の名前で検索します。そのときに見られるのが、ホームページと、地図の検索で出るGoogleビジネスプロフィール(事務所の住所・営業時間・写真などが出る欄)です。ここが整っていると、紹介の後押しになり、紹介のない方にも見つけてもらいやすくなります。

ホームページは、立派に作り直す必要はありません。まずは、初めて見た人が30秒で分かるように、次のことが書かれているかを確かめてください。

  1. だれの相談を受けているか(例: 創業期の会社・個人事業主・相続)
  2. 何をお願いできるか(記帳・決算・申告・融資の相談など)
  3. 料金の目安と、何で変わるか(「お問い合わせください」だけにしない)
  4. 相談の仕方(電話・メール・フォーム、オンライン相談ができるか)
  5. 先生の顔が見えなくても、人柄や考え方が分かる一言
  6. 紹介した人が送れる「こんな方のご相談をお受けしています」のページ
  7. 地図の情報(Googleビジネスプロフィール)の住所・営業時間・連絡先が正しい
  8. 地図の情報の説明文に、得意な相談を書いている

なお、税理士の広告には守るべき決まりがあるため、書き方に迷うときは、くわしくは所属の税理士会・専門家にご確認ください。

3段目:顧問先によく聞かれる質問に答える記事を月2本から

2段目で受け皿ができたら、次は検索から見つけてもらう入口を増やします。いちばん手間が少なく、続けやすいのは、顧問先から実際に聞かれた質問に答える記事(ブログ・コラム)です。

  • 題は、聞かれた言葉のままにする(例:「インボイスに登録しないと、取引先に断られますか?」)。お客さまが検索する言葉に近くなります。
  • 答えを最初の3行に書く。くわしい説明や例外は、その下に続けます。
  • 時期のテーマを先回りする。年末調整、確定申告、決算の前など、毎年聞かれる質問は、その1〜2か月前に出しておきます。
  • 月2本から。毎週書こうとして止まるより、月2本を1年続けるほうが、記事が積み上がります。

記事は、広告と違って、書くのをやめても残り続けるのが良いところです。一方で、検索から相談が来るまでには時間がかかります。しばらくは「顧問先に送れる答えの置き場所」として使い、紹介の後押しにする、くらいの気持ちで始めると続きやすくなります。

聞かれた質問を記事のネタに変える手順と記入表は、税理士の顧問先の増やし方:よくある質問を1問1本の発信に変える記入表にまとめています。

年末調整から確定申告までの冬に、いつ・何を書くかは、税理士のブログ集客:年末調整から確定申告まで、この冬の月別テーマ表で月ごとの表にしています。

4段目:記事の答えを短い動画にもする(必要なら)

記事が何本かたまってきたら、その答えを1〜3分の短い動画にする方法もあります。文章を読むのが苦手な方や、スマホで手早く知りたい方に届きやすくなり、YouTubeで検索した方の目にも触れます。

ただし、動画は集客方法の一つにすぎません。最初からやる必要はなく、1〜3段目ができていないうちに始めると、手間ばかりが増えてしまいます。始めるなら、次の形がおすすめです。

  • 新しく台本を考えない。3段目の記事の「最初の3行の答え」を、そのまま話す原稿にします。
  • 顔を出さなくてよい。資料の画面を映しながら話す、文字と図だけで見せる、といった形でも伝わります。
  • 毎週出すことや、登録者の数を目的にしない。記事の下に貼る、紹介した人に送る、面談の前に見てもらう、といった使い方で十分役に立ちます。
  • 続かなければ、足さなくてよい。動画をやめても、3段目までの入口はそのまま残ります。
顧問先によく聞かれる質問1つ
  • 記事検索から見つけてもらう
  • 短い動画答えを1〜3分で
  • よくある質問ホームページに載せる
  • 紹介用のリンク紹介した人が送る
図3 1つの質問への答えを、記事・短い動画・ホームページのよくある質問・紹介用のリンクの4か所で使い回す

撮るのは自分で、編集だけを外に頼むこともできます。頼む前に決めておくこと(動画の役目・任せる範囲など)は動画編集を依頼する前に決める5つのことに、1本あたりの費用が何で変わるかは動画編集の依頼相場:1本の値段が変わる6つの条件にまとめています。

撮る・書くところまで含めて、先生と外でどう分けるかは、税理士の営業代行を考える前に読む記事にまとめています。

1つの答えをSNSや短い動画にも分けて、週1本で回す形は、社労士のSNS:事務所の発信を週1本で続ける、1本を3つに分ける回し方にまとめています。

税理士の集客方法は「手間と続けやすさ」で選ぶ

税理士の先生にとって、いちばん足りないのはお金より時間ではないでしょうか。そこで、4つの入口を「費用」ではなく「手間」「効き始め」「やめても残るもの」で並べました。右の欄で、それぞれ「今月から」「あとで」「済み」のどれかに印を付けてみてください。「今月から」は1つか2つに絞るのがおすすめです。

入口手間・効き始め・残るもの印
1段目 紹介を頼み直す手間は小さい。すぐに始められ、紹介元との関係が残る今月からあとで済み
2段目 ホームページと地図の情報最初だけ手間がかかり、あとは見直す程度。紹介された方が確かめる場所になる。ページが残る今月からあとで済み
3段目 よくある質問の記事手間は中くらいで、続けることが大事。検索から効くまでに時間がかかる。記事が積み上がって残る今月からあとで済み
4段目 短い動画記事があれば手間は中くらい。効き始めは遅め。動画が残り、記事やホームページにも貼れる今月からあとで済み

段を上がる合図は、シンプルに「前の段を1か月続けられたら、次へ」で構いません。続かなかったら、1つ前の段に戻ってかまいません。全部を一度にやろうとせず、今の事務所で回る分だけを足していくことが、結果的にいちばん長く続きます。

お金で早く会いたいときの、別の道

広告や、税理士を探している方とつなぐ紹介サービス、セミナー、DMといった方法もあります。費用はかかりますが、早く新しい方と会えるのが良いところです。この記事の順番には入れていませんが、「すぐに顧問先を増やしたい」「開業直後で紹介元がほとんどない」といったときは、1〜2段目と並行して検討してもよいでしょう。その場合も、問い合わせを受け止める2段目のホームページが整っていると、せっかくの出会いが無駄になりにくくなります。

社労士・行政書士の事務所向けに、紹介以外の5つの入口と最初の1か月の進め方を、士業の集客、紹介以外の5つの入口と最初の1か月でまとめています。

よくある質問

開業したばかりで紹介がありません。何から始めればいいですか?

1段目と2段目からです。前の職場や知り合い、口座のある金融機関に「開業しました。こんな方のご相談をお受けしています」と一言伝え、同時にホームページと地図の情報(Googleビジネスプロフィール)を整えます。どちらもお金はほとんどかかりません。早く会いたい場合は、7章の「別の道」も並行して検討してみてください。

ホームページを作れば、問い合わせは来ますか?

作っただけでは、紹介のない方からの問い合わせは来にくいのが正直なところです。ホームページは、まず「紹介された方が確かめる場所」として役に立ちます。そのうえで、3段目のよくある質問の記事を足していくと、検索から見つけてもらえる入口が少しずつ増えていきます。

税理士の集客に、SNSやYouTubeは必要ですか?

最初からは要りません。1〜3段目ができてから、記事の答えを短い動画や投稿にすると、新しく考える手間が少なくて済みます。顔を出さなくても作れますし、続かなければ足さなくてかまいません。

集客は自分でやるべきですか、外に頼むべきですか?

「何を伝えるか」を決めることと、内容が正しいかを確かめることは、先生にしかできません。一方で、ホームページの手直し、記事の体裁を整えること、動画の編集といった手を動かす作業は、外に任せることもできます。まずは自分で1か月やってみて、時間がかかりすぎる作業から任せると、どこを頼めばよいかが分かりやすくなります。先生・事務所の人・外の3者での分け方は、税理士の営業代行を考える前に読む記事にまとめています。

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映作堂について

映作堂は、会社のウェビナー録画とYouTube動画の編集をお引き受けしています。録画を送っていただくだけで、伝わる動画に仕上げます。4段目まで進み、記事の答えを短い動画にしたくなったときは、録画を送っていただければ、編集はこちらで引き受けます。まずは1本、お試しください。