開業のあいさつ回りや、前の職場・知り合いからの紹介で、少しずつご依頼をいただいてきた。でも、紹介はいつ来るか分からず、来月の見通しが立たない。集客方法を調べると、ホームページ、SNS、広告、セミナー、交流会、チラシと、10個以上の方法が並んでいて、どれから手をつければよいのか迷ってしまう──そんな先生は少なくありません。

先生にとって、いちばん足りないのはお金より時間です。そこでこの記事では、方法を並べて比べるのではなく、紹介以外の入口を5つに絞り、最初の1か月で何をするかを、週ごとの予定表にしてお伝えします。社労士と行政書士で効きやすい入口の違いも、1つの表にまとめました。

紹介以外の、5つの集客の入口

  1. 入口1 他士業との相互紹介税理士・司法書士などに、こちらから頼みに行く
  2. 入口2 専門のページと地図業務ごとに1ページ・地図の説明文
  3. 入口3 時期の解説記事お客さまが調べる時期に、月1〜2本
  4. 入口4 地域の場経営者の集まり・勉強会を月1回まで
  5. 入口5 お客さまへのお知らせ手続きの後に「次のご案内」を1枚

5か所のどこから来ても、同じ一言で伝わる

図1 社労士・行政書士の事務所の、紹介以外の5つの集客の入口。上から順に進む階段ではなく、5つを並べて小さく同時に始めます

士業の集客は「専門の一言」を5つの入口に置くこと

士業の集客方法を考えるとき、まず押さえておきたいのは、紹介は今もいちばん頼りになる入口だということです。紹介されて来る方は、はじめから先生を信頼していて、話も早く進みます。紹介をやめて別の方法に乗り換える必要はありません。

ただ、紹介は相手のタイミングしだいです。紹介してくれる方の事情が変われば止まりますし、こちらから増やすのも簡単ではありません。そこで、紹介と並べて、こちらから動ける入口を足します。それが図1の5つです。入口1も紹介ですが、相手まかせではなく、こちらから頼みに行く紹介です。

5つに絞ったのには理由があります。集客の方法は10個以上ありますが、先生がひとりで、またはごく少人数で回す事務所では、全部を続けることはできません。5つは、どれもお金がほとんどかからず、どれも前の入口で作ったものを使い回せるものを選んでいます。たとえば、2章で決める「専門の一言」は、入口1の紹介のお願いにも、入口2のページの一行目にも、入口3の記事の題にも、そのまま使えます。

そして、5つをつなぐ糸が「専門の一言」です。紹介のお願いでも、ホームページでも、地図の情報でも、記事でも、お客さまへのお知らせでも、同じ言葉で「何の専門の事務所か」を伝えます。入口がばらばらの言葉で話していると、見た人の記憶に残りません。同じ一言が5か所にあると、「あの事務所は○○の先生だ」と思い出してもらいやすくなります。

まず決める:だれの・どの手続きの専門か

集客の記事の多くに「専門を絞る」「なんでも対応しますは選ばれにくい」と書かれています。そのとおりなのですが、絞ったあと、その言葉をどこに置くかまでは決まっていないことがよくあります。この記事では、絞った専門を1行の言葉にして、5つの入口に置くところまで進めます。

専門の一言は、「だれの」と「どの手続き・お悩み」をつなげるだけで作れます。

だれの例: 人を雇い始めた小さな会社
どの手続き・お悩み例: はじめての就業規則
専門の一言1行で書く
紹介のお願いページの一行目地図の説明文記事の題お客さまへのお知らせ
図2 「だれの」と「どの手続き・お悩み」をつなげると専門の一言になり、5つの入口のどこに置く言葉も同じにそろいます

たとえば、次のような一言です(どれも例です)。

  • 社労士の例:「人を雇い始めた小さな会社の、はじめての就業規則と手続き」
  • 社労士の例:「飲食店・美容室の、シフトと休みの決まりづくり」
  • 行政書士の例:「建設業を始める方の、許可の取得と更新」
  • 行政書士の例:「外国の方を雇いたい会社と働く方の、在留資格の手続き」

決めるときのコツは3つです。1つ目は、今までに受けた依頼から選ぶこと。経験のある業務のほうが、ページも記事も書きやすく、お客さまの質問にも答えやすくなります。2つ目は、お客さまの言葉で書くこと。法律の名前や業務の正式な名前より、お客さまが困ったときに口にする言葉のほうが伝わります。3つ目は、1つに決めても、ほかの依頼を断る必要はないということです。入口で見せる言葉を1つにするだけで、来た相談は今までどおり受けられます。

入口1・2:他士業との相互紹介と、専門のページ・地図

入口1 他士業との相互紹介

税理士・司法書士・弁護士など、ほかの士業の先生は、先生の専門のお客さまに出会っていることがよくあります。たとえば、税理士の顧問先で人を雇い始めた会社、司法書士のところで会社を立ち上げた方などです。

このときに大事なのは、「紹介してください」だけで終わらせないことです。こちらのお客さまで、相手の先生の専門のご相談があればおつなぎします、と添えると、一方的なお願いではなく、お互いのお客さまのためのつながりになります。最初は、顔の分かる先生3人に送れば十分です。

そのまま使える「相互紹介」の文面

件名: ごあいさつと、お客さまのご紹介について(【事務所名】)

【お相手のお名前】先生

いつもお世話になっております。【事務所名】の【お名前】です。

当事務所では、【専門の一言: 例 人を雇い始めた小さな会社の、はじめての就業規則と手続き】を中心にお引き受けしています。

もし先生のお客さまで、次のようなことでお困りの方がいらっしゃいましたら、ご紹介いただけないでしょうか。
・【例: はじめて従業員を雇うことになり、何から手続きすればよいか分からない会社】
・【例: 休みや残業の決まりを、きちんと書面にしておきたい会社】

反対に、当事務所のお客さまで【先生のご専門: 例 決算・申告/登記】のご相談があったときは、先生におつなぎしてもよろしいでしょうか。

ご紹介の際は、こちらのページのリンクをそのままお送りいただければ大丈夫です。
【専門のページのURL】

ご無理のない範囲で、お心に留めていただけましたら幸いです。

【事務所名】【お名前】
【電話番号・メールアドレス】

なお、紹介にお金のやりとりがからむ場合は、所属の社労士会・行政書士会の決まりを先に確かめてください。紹介の頼み方や、紹介をいただいた後のお礼の伝え方は、税理士の集客、紹介が止まったら次はこの順番での3章でまとめています。

入口2 業務ごとに1ページと、地図の情報

紹介された方も、検索で見つけた方も、まずは事務所の名前やホームページを確かめます。ここで大事なのは、ホームページ全体を作り直すことではなく、専門の業務について1ページを用意することです。

  • 一行目に専門の一言を書く(「当事務所について」より先に)
  • どんな方の、どんなご相談を受けているか
  • 料金の目安と、何で変わるか(「お問い合わせください」だけにしない)
  • 相談の仕方(電話・メール・フォーム、オンラインでもよいか)

あわせて、地図の検索で出るGoogleビジネスプロフィール(事務所の住所・営業時間・説明文が出る欄)の説明文にも、同じ専門の一言を入れます。行政書士の業務のように、一般の方が「近くの事務所」を探すことが多いご相談では、ここから見つけてもらえることもあります。士業の広告には守る決まりがあるため、書き方に迷うときは所属の会や専門家にご確認ください。

入口3:お客さまが調べる時期に合わせた解説記事

3つ目の入口は、検索から見つけてもらうための解説記事(ブログ・コラム)です。社労士の集客でも、行政書士の集客でも、書きやすく、効きやすいのは「お客さまがそろそろと調べ始める時期」に合わせた記事です。

  • 社労士の事務所なら、制度が変わる前や、毎年の手続きの前に、会社の担当の方が調べること
  • 行政書士の事務所なら、許可の更新や届出など、お客さまが期限を気にし始めること

書き方は、むずかしく考えなくて大丈夫です。

  1. 実際に聞かれた質問から選ぶ。題は、お客さまが言った言葉に近づけます。
  2. 答えを最初の3行に書く。例外やくわしい説明は、その下に続けます。
  3. 記事の最後に、専門のページへのリンクを置きます(入口2とつながります)。
  4. 月1〜2本で十分。毎週を目指して止まるより、少なくても続くほうが記事は積み上がります。

制度や手続きの時期・中身は、書く前に厚生労働省や、その手続きを受け持つ役所のページで必ず確かめてください。記事には、確かめた日と、もとにしたページを書き添えておくと、読む人にも安心してもらえます。

記事が何本かたまってきたら、その答えを1〜3分の短い動画にする方法もあります。ただ、動画は集客の手段の一つにすぎません。顔を出さなくても作れますし、続かなければ足さなくてかまいません。撮るのは自分で、編集だけを外に頼むこともできます。頼む前に決めておくことは動画編集を依頼する前に決める5つのことに、1本あたりの費用が何で変わるかは動画編集の依頼相場:1本の値段が変わる6つの条件にまとめています。

書いた記事を、SNSや短い動画にも分けて週1本で回す形は、社労士のSNS:事務所の発信を週1本で続ける、1本を3つに分ける回し方にまとめています。

入口4・5:地域の場と、一度頼んでくれたお客さまへのお知らせ

入口4 地域の場は「月1回まで」でよい

商工会議所や商工会、金融機関の集まり、経営者の勉強会、業種ごとの集まりなど、地域にはお客さまと直接話せる場があります。顔を合わせて話した相手は、困ったときに思い出してくれやすくなります。

ただ、人と会う入口は、いちばん時間と気力を使います。月1回までと決め、合わないと感じたら外してかまいません。話す機会をもらえたときは、話した内容をそのまま入口3の記事にすると、1回の準備が2回分に使えます。

入口5 手続きの後に「次のご案内」を1枚渡す

行政書士の集客の悩みとしてよく挙がるのが、1回の手続きで終わり、次につながりにくいことです。社労士の事務所でも、手続きだけをお引き受けしたお客さまとは、それきりになりがちです。

そこで、手続きが終わったときに、「次に気にかけてほしいこと」を1枚にまとめて渡します。お客さまにとっては次の準備の目安になり、事務所にとっては、次の依頼や、お客さまからの紹介の入口になります。新しいお客さまを探すより手間が少なく、お金もほとんどかかりません。

手続きの後に渡す「次のご案内」(例)1枚・紙でもメールでも
行政書士
終わった手続き
例: 建設業の許可の取得
次に気にかけてほしいこと
例: 許可の通知書に書かれた有効期間の終わる日。更新の準備は早めに
ご連絡いただきたいとき
例: 会社の体制や所在地が変わるとき
社労士
終わった手続き
例: はじめての就業規則の作成
次に気にかけてほしいこと
例: 人が増えたときや、働き方を変えるときの見直し
ご連絡いただきたいとき
例: 新しく人を雇うとき・休みの決まりを変えたいとき
共通
専門の一言
事務所の専門を1行で(ほかの入口と同じ言葉)
連絡先
電話・メール・専門のページのリンク
この後のお知らせ
例: 年に数回、関係のありそうなことをメールでお知らせします
図3 手続きが終わったお客さまに渡す「次のご案内」の見本。終わった手続き・次に気にかけてほしいこと・ご連絡いただきたいときを1枚にまとめます

すでに手続きが終わったお客さまにも、遅すぎることはありません。過去のお客さまの一覧から、まずは5人ほどに送ってみてください。メールでお知らせを送るときは、受け取ってよいかを先にうかがっておくと安心です。

社労士と行政書士で、効きやすい集客の入口は違う

社労士には、会社と長くお付き合いする顧問の仕事と、手続きの仕事の両方があります。行政書士は、業務によっては1回の手続きで終わるご依頼も多くなります。どちらが良いということではなく、仕事の形が違うので、効きやすい入口も少し変わります。下の表は目安です。業務や地域によって変わるので、ご自身の事務所に近いほうを参考にしてください。

入口社労士の事務所では行政書士の事務所では
入口1 他士業との相互紹介税理士の顧問先で、人を雇い始めた会社のご相談が生まれやすい司法書士・税理士のところで、許可や届出のご相談が出やすい
入口2 専門のページと地図紹介された会社が確かめる受け皿になる一般の方が「近くの事務所」を探すことが多く、見つけてもらう入口になりやすい
入口3 時期の解説記事制度が変わる前に、会社の担当の方が調べる許可の更新などで、お客さまが期限を気にし始めたときに読まれる
入口4 地域の場経営者の集まりで、人の悩みを聞く機会になる業種の集まり(例: 建設・運送)に絞ると話が通じやすい
入口5 お客さまへのお知らせ手続きだけのお客さまが、顧問の相談を考えるきっかけになる1回で終わりやすいご依頼を、次の手続きにつなげる

どちらの事務所でも、手間が小さく、お金がほとんどかからないのは入口1と入口5です。迷ったら、この2つから手をつけると、始めやすく続けやすいはずです。

広告や、士業を探す人とつなぐサービスを使うとき

広告、士業を探している方とつなぐサービス、DMやチラシといった方法もあります。お金をかけて、早めに新しい方と出会う方法です。この記事の5つには入れていませんが、使うときは、先に入口2の専門のページを整えておくことをおすすめします。出会えた方がページで「何の専門の事務所か」を確かめられると、そのまま相談しやすくなるからです。広告の決まりについては、所属の社労士会・行政書士会や専門家にご確認ください。

士業の集客方法、最初の1か月の予定表(週ごとにやること)

5つの入口は、1つを仕上げてから次へ進むのではなく、週に1つずつ始めて、始めたものは小さく続けたまま次を足します。どれも「最初の1回」だけなら、1週間のすき間の時間でできる大きさにしてあります。

  1. 1週目 専門の一言+入口1一言を決めて、他士業の先生3人に送る今週やること: 図2で一言を1行に書く/3章の相互紹介の文面を3人に送る
  2. 2週目 入口2専門のページ1枚と、地図の説明文今週やること: ページの一行目に一言/料金の目安と相談の仕方を書く/地図の説明文にも同じ一言
  3. 3週目 入口3時期の解説記事を1本今週やること: 聞かれた質問から1つ選ぶ/答えを最初の3行に/時期や中身は役所のページで確かめる
  4. 4週目 入口5お客さまへのお知らせ(地域の場の申し込みは、余裕があれば)今週やること: 過去のお客さま5人に「次のご案内」を送る/余裕があれば、地域の場を1つだけ申し込む
図4 士業の集客、最初の1か月の予定表。週ごとに小さく始め、始めた入口は止めずに小さく続けます

2週目からは、前の週に始めたことを「少しだけ」続けます。紹介のお願いは月に1〜2人、記事は月1〜2本、お知らせは手続きが終わるたびに1枚、地域の場は月1回まで。これくらいの量なら、ふだんの業務と並べても回せます。

1か月たったら、次のことを確かめて、2か月目に残す入口を決めます。続かなかった入口は、外してかまいません。続いた入口だけを残すほうが、結果として長く続きます。

  1. 専門の一言が、5か所(紹介のお願い・ページ・地図・記事・お知らせ)で同じ言葉になっている
  2. 他士業の先生3人に連絡した(返事がなくても、来月はもう2人に)
  3. 専門のページの一行目と、地図の説明文に一言が入っている
  4. 解説記事を1本出し、次の1本の題が決まっている
  5. 過去のお客さまに「次のご案内」を送った
  6. 地域の場に出られた場合は、続けたいと思えたか(合わなければ外す)
  7. 2か月目に残す入口に印を付けた

入口のうち、どこまでを先生がやり、どこを外に任せられるかは、税理士の営業代行を考える前にの分担図が参考になります。

よくある質問

1回の手続きで終わるご依頼が多いのですが、次につなげる方法はありますか?

入口5の「次のご案内」を、手続きが終わるときに1枚渡すのがいちばん手軽です。終わった手続き・次に気にかけてほしいこと・ご連絡いただきたいときを書くだけで、お客さまには次の準備の目安になります。すでに終わったお客さまにも遅くはないので、過去のお客さまから5人ほどに送ってみてください。

ホームページなしでも集客できますか?

紹介だけなら始められます。ただ、紹介された方も、まずは事務所の名前で検索して確かめます。立派なサイトでなくてよいので、専門の業務について1ページ(専門の一言・料金の目安・相談の仕方)は用意しておくのがおすすめです。

社労士と行政書士、どちらも名乗れる場合は、専門の一言をどう決めればいいですか?

今までにご依頼が多かったほうで、まず1つに決めます。もう一方の業務は、入口2で業務ごとに1ページ作り、そのページの一行目に、その業務の一言を書けば十分です。入口で見せる言葉を分けるだけなので、来た相談は今までどおり、どちらもお受けできます。

専門を絞ると、ほかの依頼が来なくなりませんか?

絞るのは「入口で見せる言葉」だけです。来た相談を断る必要はなく、今までどおりお受けできます。むしろ、何の専門かが伝わると、「この先生なら」と紹介してもらいやすくなります。

確かめ先: この記事で例に挙げた手続きの期限や中身は、書く前に次のページで確かめてください(2026年10月29日に確認)。
厚生労働省「モデル就業規則について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
国土交通省「建設業の許可とは」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000080.html
出入国在留管理庁「在留資格から探す」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/index.html

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