「成功事例〇選」のような記事を読んで、「すごいな」と思ったものの、では明日から自社で何をすればいいのかが分からない。登録者が何十万人もいるチャンネルを見ても、社員数も予算もちがう自社には遠い話に感じる。会社のYouTubeを担当している方から、よく聞くお悩みです。
成功事例は、読み方を変えると役に立ちます。会社の名前や登録者数を追うのではなく、公開されているチャンネルを、だれでも同じ手順で観察できる4つの所で見ていきます。下の図が、この記事でご紹介する流れです。
成功事例から、自社に取り入れるまでの4ステップ
- 2〜3チャンネルを観察題名・長さ・頻度・導線
- まねる所を1つ選ぶ来月から変えられるもの
- 次の4本で試すほかは変えない
- 見る数字で振り返る目的に合った数字で
中小企業のYouTube成功事例は「何を見るか」で役に立つ
企業のYouTube成功事例やYouTube集客の事例を探すと、たくさんの記事が見つかります。そもそも中小企業でもYouTubeは役に立つのか、という問いには、YouTubeが2025年に発表した調査(2024年の日本についての調査)が1つの手がかりになります。この調査では、YouTubeチャンネルを持つ中小企業の74%が、「新規顧客開拓にYouTubeが役立った」と回答しています。
ただし、これはYouTubeを運営する側が発表した調査で、チャンネルを持っている会社に聞いた結果です。「始めればどの会社でも成果が出る」という意味ではありません。役に立った会社がいる一方で、思ったように進まない会社もある。だからこそ、うまくいっている会社が何をしているのかを、自分の目で確かめることに意味があります。
ここで気をつけたいのは、事例記事に載っている登録者数や売上の数字です。同じチャンネルでも、記事によって登録者数がちがったり、数字の出どころが書かれていなかったりします。数字は時期によっても変わります。そこでこの記事では、数字ではなく、チャンネルのページを開けばだれでも確かめられる所を見ていきます。
出典: YouTube「2024 年の日本における YouTube の影響」(Oxford Economics による調査、2025年9月5日発表)。回答した会社の数や、聞いた時期は、元の資料に書かれていません。ページへのリンクは、記事の最後の「この記事で参考にしたページ」にあります。
先に決める:自社のYouTubeにとっての「成功」
観察を始める前に、1つだけ決めておくことがあります。自社にとっての「成功」とは何かです。これが決まっていないと、つい「登録者が多いチャンネル=成功」と見てしまい、自社には合わない工夫をまねることになります。
2026年に、YouTubeを自社で運用している、または運用したことがある会社の担当者303人に聞いた調査があります。このうち、「撤退・中止した経験はない」と答えた113人に「撤退・中止せずに運用し続けた理由は何ですか?」と聞くと(複数回答)、上位は「ブランド認知度が向上した」23.9%、「営業成果につながるリードが発生した」21.2%、「顧客との接触機会が増えた」18.6%でした。続けた会社が挙げた理由は、登録者数や再生数ではなく、知ってもらう・問い合わせにつながる・お客さまとの接点が増える、といったことだったのです。
出典: 「YouTube運用の撤退・失敗に関する実態調査」株式会社アカシア、2026年3月30日発表(調査 2026年2月12日・インターネット調査・YouTubeを自社で運用中または運用した経験がある企業の担当者303人。続けた理由は、撤退・中止の経験を「いいえ」と答えた113人の回答)。
そこで、観察の前に「だれに見てもらい、何をしてほしいか」を1行で書きます。
この1行の作り方は、動画編集を依頼する前に決める5つのことの「動画の役目」と同じ考え方です。目的に合わせて、どの数字を見ればよいかは、企業のYouTubeの目的の記事でくわしくご紹介しています。
観察するチャンネルの選び方:3つの条件
観察するチャンネルは、2〜3つで十分です。有名なチャンネルより、次の3つの条件に合うチャンネルのほうが、まねる所を見つけやすくなります。
- 自社と同じお客さまに向けている: 地域・業種・相手が会社か個人か、のどれかが近いチャンネルを選びます。同じ業種でなくても、お客さまが近ければ参考になります
- 投稿が続いている: 最近の数か月にも動画が出ているチャンネルを選びます。一度止まっていても、再開して続いているなら、それも観察する価値があります
- 規模が自社に近い: 登録者が多すぎるチャンネルは、人や予算のかけ方がちがうことがあります。事例記事でよく紹介される大きなチャンネルは、「参考に1つまで」にしておきます
事例記事では、地域の葬儀社、片付けの会社、飲食店、中古車の販売など、地域のお客さまに向けた会社のチャンネルがよく紹介されています。業種はちがっても、「だれに向けているか」が近ければ、観察する価値があります。
探し方は簡単です。YouTubeの検索で「業種名+地域名」や、「自社のお客さまがよく口にする悩み」で検索し、同じような立場の会社が出しているチャンネルを開いてみてください。見つけたチャンネルに順位を付ける必要はありません。それぞれを別々に観察します。
中小企業のYouTubeで見る4つの所:題名・長さ・頻度・導線
成功事例の記事では、うまくいっている会社の共通点として「悩みに答えている」「続けている」などがよく挙げられます。ただ、言葉だけでは、自社で何を変えればよいかが分かりにくいものです。そこで、共通点をチャンネルのページで目に見える4つの所に置き換えます。
- 題名: 最近の10本の題名に、だれの・どんな悩みの言葉が入っているか
- 長さ: 10本でいちばん多い長さの帯と、ショートがあるか
- 頻度: 10本の公開日から、だいたい何日おきか
- 導線: 概要欄の1行目と、動画の終わりの一言
どれも、チャンネルのページの「動画」のタブを開いて、新しい順に並んだ最近の10本を見れば分かります。1チャンネルあたり15分ほどが目安です。
題名:だれの、どんな悩みに答えているか
最近の10本の題名を書き写し、「だれの」「どんな悩み」の言葉や、地名・業種名・数字が入っているかを見ます。題名の言葉から、そのチャンネルがだれに向けて話しているかが分かります。
長さ:いちばん多い長さの帯
一覧に出ている再生時間を10本分メモし、いちばん多い長さの帯をつかみます。長さがそろっていれば、毎回同じ型で作っている合図で、続けやすさのヒントになります。
いまある本編からショートを選んで作る方法は、企業のYouTubeショート:本編1本から5本を選ぶ基準と見本でご紹介しています。
頻度:だいたい何日おきか
10本の公開の時期から、だいたい何日おきに出しているかを見ます。そのチャンネルが無理なく続けられている頻度が分かります。
自社のチャンネルが止まりがちなときの立て直し方は、YouTubeが続かない会社へ:止まる3つの理由と再開の手順にまとめています。
導線:見た人に、次に何をしてほしいか
導線とは、動画を見た人を、次の行動(問い合わせるなど)へ案内する道すじです。見る所は3つです。
- 概要欄(説明欄)の1行目: どこへのリンクが、いちばん上に置かれているか
- 動画の終わりの一言: 最後の30秒ほどで、何をしてほしいと話しているか
- 固定コメント: コメント欄のいちばん上に、案内を置いているか
見たいのは、見た人にしてほしいことが1つに絞られているかです。導線は、2章で書いた「自社の成功」にいちばん近い所です。
YouTube成功事例の観察シート(記入例つき)
観察シートは、1つのチャンネルにつき1枚使います。チャンネルどうしを1枚に並べて点を付けることはしません。比べるのは、よそのチャンネルどうしではなく、「そのチャンネル」と「自社」です。下は、架空の工務店のチャンネルを観察した記入例です。
- 見たこと
- 10本のうち7本に地名が入っている。「〇〇市で建てる前に」「雪の多い地域の家」など(例)
- 自社との差
- 自社の題名には地名がほとんど入っていない
- 見たこと
- 8〜12分が多い。ショートは月に数本(例)
- 自社との差
- 自社は3分から20分まで、毎回ばらばら
- 見たこと
- だいたい2週に1本。夏に1か月ほど空いて、その後再開している(例)
- 自社との差
- 自社は月1本だが、止まりがち
- 見たこと
- 概要欄の1行目が見学会の案内だけ。終わりの一言も毎回「見学会でお待ちしています」(例)
- 自社との差
- 自社の概要欄は会社の紹介文から始まり、リンクが5つ並んでいる
- 1つだけ
- 導線: 概要欄の1行目を見学会の案内だけにし、終わりの一言をそろえる
記入例のように、「見たこと」と「自社との差」を並べて書くと、まねる所の候補が自然に浮かびます。記入例の内容や数字はすべて架空のもので、実在のチャンネルを観察したものではありません。
下の空のシートは、コピーして社内の共有メモなどに貼り付けて使えます。チャンネルの数だけコピーしてください。
そのまま使える観察シート(1チャンネルに1枚)
YouTubeチャンネル 観察シート ■ 自社の成功(1行): 【だれ】に見てもらい、【してほしいこと】につなげる ■ 観察したチャンネル: 【チャンネル名・URL】 ■ 選んだ理由: 同じお客さま/投稿が続いている/規模が近い ■ 観察した日: 【〇月〇日】 1. 題名(最近の10本) 見たこと: 【だれの・どんな悩みの言葉が入っているか/地名・業種名・数字】 自社との差: 【 】 2. 長さ(最近の10本) 見たこと: 【いちばん多い長さの帯/ショートがあるか】 自社との差: 【 】 3. 頻度(最近の10本) 見たこと: 【だいたい何日おきか/止まった時期と再開】 自社との差: 【 】 4. 導線 見たこと: 【概要欄の1行目とリンク先/終わりの一言/固定コメント】 自社との差: 【 】 ■ まねる所(1つだけ): 【 】 ■ 試す本数: 次の【4】本 ■ 振り返る日と、見る数字: 【〇月〇日】【例: 概要欄のリンクから問い合わせた数】
まねる工夫は1つだけ選び、次の4本で試す
シートを2〜3枚書くと、まねたい所がいくつも見つかるはずです。けれど、まねるのは1つだけにします。いくつも同時に変えると、作る手間が一気に増えて続かなくなりやすく、何が効いたのかも分からなくなるからです。
1つを選ぶときは、次の3つを目安にします。
- 来月から変えられる: 新しい機材や人を用意しなくても、次の動画から試せる
- 社内で決められる: 上の人の許可や、ほかの部署との調整がほとんどいらない
- 自社の成功に近い: 2章で書いた1行に、いちばん近い所を変えるもの
迷ったら、導線から選ぶのがおすすめです。概要欄の1行目や終わりの一言は、撮り方を変えなくても直せるうえ、「見た人に何をしてほしいか」に直接つながるからです。
選んだら、図1のとおり、次の4本だけその工夫を入れて出し、ほかは今までどおりにします。4本出したら、2章で決めた目的に合った数字(たとえば、概要欄のリンクから問い合わせた数)を見て、続けるか、別の工夫に替えるかを決めます。最初の4本の決め方は、YouTubeが続かない会社へ:止まる3つの理由と再開の手順で、シートつきでご紹介しています。
なお、まねる工夫によっては、編集の手間が増えることもあります。たとえば長さをそろえる、テロップの型を決めるといった工夫です。編集を外に頼む場合は、何が値段に含まれるかを先に確かめておくと安心です。見積もりの読み方はYouTube運用代行の相場:見積もりの「何が含まれる値段か」を読む方法に、編集だけを頼むときの値段の決まり方は動画編集の依頼相場:1本の値段が変わる6つの条件と、見積もりの頼み方にまとめています。
企業のYouTube事例を読むときに気をつけること
最後に、成功事例を読むとき・観察するときに気をつけたいことをまとめます。
- 登録者数・再生数は、時期と記事で変わる: 事例記事の数字は、書かれた時期のものです。記事によって数字がちがうこともあります。数字より、今のチャンネルのページで確かめられる所を見ます
- 売上などの成果は、確かめられないことが多い: 「問い合わせが何倍に」といった数字は、出どころが書かれていないことがあります。そのまま自社の目標にしないようにします
- 人と時間が必要な企画もある: 名物社員が毎回出演する、手の込んだ企画を続ける、といった形は、出る人や作る時間の用意が必要です。社内で顔を出す人がいない場合の形は、会社のYouTubeに社員が出たくないとき:顔出しなしの3つの形にまとめています
- まねるのは「形」まで: 題名の付け方・長さ・頻度・導線は参考にし、話す内容や映像はそのまま写しません(くわしくは、よくある質問へ)
- チャンネルどうしに順位を付けない: どれが一番かを決めるより、それぞれのチャンネルから自社に合う所を1つ見つけるほうが、次の1本につながります
出る人の話す準備を軽くしたいときは、台本を3行のメモにする方法を企業YouTubeの台本はいらないでご紹介しています。
まとめ
中小企業のYouTube成功事例は、登録者数や会社の名前を追うより、題名・長さ・頻度・導線の4つを自分の目で観察すると、まねる所が見つかります。先に自社の「成功」を1行で書き、自社に近いチャンネルを2〜3つ選んで、1チャンネルに1枚ずつシートを書く。まねるのは1つだけにして、次の4本で試す。この順番なら、無理なく取り入れられます。
まずは、次の5つから始めてみてください。
- 自社のYouTubeの「成功」を、「だれに・何をしてほしいか」の1行で書いた
- 同じお客さま・投稿が続いている・規模が近い、のチャンネルを2〜3つ選んだ
- 1チャンネルに1枚、題名・長さ・頻度・導線を観察した
- まねる所を1つだけ選んだ(迷ったら導線から)
- 次の4本で試し、振り返る日と見る数字を決めた
よくある質問
中小企業でもYouTubeで成果は出ますか?
YouTubeが2025年に発表した調査では、YouTubeチャンネルを持つ中小企業の74%が「新規顧客開拓にYouTubeが役立った」と回答しています。ただし、どの会社でも同じように成果が出るとは言い切れません。まずは自社にとっての成果(問い合わせ・採用・知ってもらうことなど)を1行で決め、それに合った数字で確かめていくのがおすすめです。
BtoBの会社でもYouTubeは使えますか?
使えます。会社を相手にする場合は、見てほしい人が「取引先の担当者」などにはっきりしているぶん、題名や導線を絞りやすいとも言えます。観察するときは、同じように会社を相手にしているチャンネルを選び、導線(資料の案内・問い合わせの案内など)を特によく見てみてください。
成果が出るまで、何本・どのくらいの期間かかりますか?
業種や目的、出す頻度によって大きく変わるため、何本・何か月と言い切ることはできません。おすすめは、期間ではなく「何本出したら、どの数字を見て判断するか」を先に決めておくことです。この記事では、まねる工夫を1つ選んで、次の4本で試す形にしています。
有名な企業チャンネルの企画を、そのまま真似してもいいですか?
題名の付け方や長さ、出す頻度、導線といった「形」は参考にしてかまいません。一方で、話す内容や映像、台本をそのまま写すのは避けましょう。また、有名なチャンネルの企画は、出演する人や作る時間が必要なこともあります。自社の規模に近いチャンネルから、まねる所を1つ選ぶほうが続けやすくなります。権利について迷うときは、弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事で参考にしたページ
1章・2章の調査の数字は、次のページで確かめました(2026年10月29日に映作堂で確認)。1つ目はYouTubeによる発表、2つ目はYouTube運用の支援を手がける会社による調査です。
YouTube『2024 年の日本における YouTube の影響』(Oxford Economics による調査・2025年9月5日発表)(発表のお知らせ)
映作堂について
映作堂は、会社のウェビナー録画とYouTube動画の編集をお引き受けしています。録画を送っていただくだけで、伝わる動画に仕上げます。月額のプランでは、タイトル・概要欄を整えて、決めた日時に公開されるよう投稿の予約までお引き受けします(1本ずつのご依頼では、追加でお受けできます)。お試しで決めたテロップ・サムネイルの型は記録して、次の回からもそろえて仕上げます。観察シートで選んだ「まねる所」は、お申し込みのあとのヒアリングシートにお書きください。編集で反映できるもの(終わりの一言のテロップなど)は、型と一緒に記録して次の回からもそろえます。概要欄の1行目は、投稿の予約をお任せいただく場合に整えます。まずは1本、お試しください。